『君は知っているかい?』
『何を。』
『彼について
世界について
死について
宝冠について。』
『最初の一つについてだけ知らない。
最初の一つ以外は知る必要もない。』
『君は彼について知らない。
君は他の全てについて知っている。』
『そう、知っていた。』
『全ての知識を網羅した君よ。
神さえ君に跪き、悪魔さえ君を殺せない。』
『虚空の言葉に埋もれた私よ。
人さえ私に石を投げ、虫さえ私を嘲笑う。』
『果たして君は賢者か愚者か。』
『私は愚者だ。
賢者であるならたった一つを知っていればいい。
私はそれを知ることができなかった。』
『それは世界について?生について?栄誉について?』
『―――――・・
大切な人間について、さ。』
荘厳な廃墟に静寂が戻る。
それは、玉座にほこる骸を前に交わされた会話。